環境庁は9月24日、「98年度ダイオキシン類緊急全国一斉調査 結果」をまとめ、発表しました。調査対象の環境媒体は、大気、降下ばいじ ん、公共用水域、地下水質、公共用水域底質、土壌(市街地)、水生生物の 七つで、調査地点は全国約400地点。全体として、従来の環境調査に比べて 特別に高い数値は検出されませんでした。しかし、都内の神田川で捕獲した コイから1_当り32ピコ(1ピコグラムは1兆分の1_)と魚介類としては過去 最高濃度のダイオキシンが検出されるなど魚介類の高濃度蓄積が目立ちました。 また、小樽市など5地点で大気中の濃度が環境指針値(1立方_当り年平均0. 8ピコ_)を上回るなど、一部地域では高濃度のダイオキシン類が検出されまし た。このため、環境庁では実態把握を継続的に行い、より詳細な調査研究を 行うとしています。

 大気については年4回、降下ばいじんは夏冬2回、公共用水域水質と同底 質、地下水質、土壌については夏1回、水生生物については秋1回、それぞれ の測定を行ったものです。各サンプルからは、ポリ塩素化ジベンゾ-パラ-ジ オキシン(PCDD)とポリ塩素化ジベンゾフラン(PCDF),さらにコ プラナ・ポリ塩素化ビフェニル(コプラナPCB)を加えて「ダイオキシン 類」としています。

     
  1. 大気: 大気の年間全国平均は0.22ピコ_。このうち、ごみ焼却炉の周辺など138地点の平均は0.25ピコ_。大気環境指針値を超えた値を検出したのは小樽市(北海道)、熊谷市(埼玉県)、松戸市(千葉県)、静岡市(静岡県)、半田市(愛知県)の5地点。最も高い値となった小樽市が1.8ピコ_で、「ごみ焼却炉と工業地域に隣接した地点」(環境庁)でデータ収集を行ったためとみられています。
  2. 降下ばいじん: 降下ばいじん中の濃度の平均値21ピコ_。最も濃度の高い地点は熊谷市の210ピコ_(夏)で、平均値.の10倍。同地点は夏冬の平均値でも170ピコ_と高い数値でした。
  3. 公共用水域水質: 水道など公共用水に使用する河川などの水質調査で得られたデータは平均0.36ピコ_。しかし、発生源周辺の平均値をとると0.47ピコ_に悪化します。汚染が少ないと思われる地域の平均値は0.041ピコ_となり、発生源周辺では10倍以上の濃度となりました。
  4. 地下水質: 井戸水など地下水から検出された平均値は0.081ピコ_。重点地域では5倍以上の0.056ピコ_でした。大都市周辺で平均0.048ピコ_で、中小都市地域の平均0.14ピコ_に比べ低い値となりました。
  5. 公共用水域底質: 河川の泥などから検出された濃度は、平均7.7ピコ_。大都市近辺では平均9.6ピコ_と、中小都市周辺の平均5.5ピコ_に比べると高い値です。大気中のように急速に拡散しないため、流速の遅い河口部などでは、値が高くなる傾向にあります。
  6. 土壌: 土壌については大気中のダイオキシン類が浸透した場合が多く、平均値は6.2ピコ_でしたが、産廃銀座と呼ばれる所沢市では42ピコ_に達していました。ただ、今年7月に決定したガイドライン値1000ピコ_を超える地域はありませんでした。
  7. 水生生物: 捕獲した魚類の体内から検出された濃度は平均2.1ピコ_。これらの魚介類を体重50キログラムの人が約100_毎日食べると、一生摂取し続けても危険のないダイオキシンの安全基準である許容1日摂取量(TDI=体重1キログラム当たり42ピコ_)を超過する計算となります。環境庁は、高い値を示した地点で、食用にしている地点はなく、今回のデータで食品としての安全性は判断できないといいます。

     今回の調査結果から、大気と降下ばいじんの間については、ある種の相関関係を想定することができましたが、他の媒体については相関を想定することができず、廃棄物焼却炉の規制や排出ガスだけの規制だけでは、環境中の汚染濃度を低減することは難しい状況にあることが示唆されました。環境庁では今後も環境中のダイオキシンの挙動・濃度に関する調査を継続していく方針で、さらに詳細な環境中の濃度分布把握、挙動解明を進めるとしています。  

       資料; 平成11年9月27日付 化学工業日報, および 日本工業新聞

    計測課  島崎 鉄男


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