近年、湖沼の有機物濃度が増大傾向にあり、 浄水過程でトリハロメタンの生成が大きな問題になっていますが、国立環境研究所はこのほど、トリハロメタン生成原 因物質として、これまで定説とされていた疎水性のフミン物質よりも、親水性の難分解性有機物の関与の方が重要だと する研究成果をまとめました。
近年、霞ヶ浦や琵琶湖などの湖沼で流域発生源対策が行われているのにもかかわらず、有機物濃度(COD)が増大 する傾向がみられ、バクテリアなどが分解し切れない難分解性の溶存有機物(DOM)による水質汚濁の進行が指摘さ れていました。こうした湖沼では植物プランクトンを中心に生態系の変化が著しく、また水道水源として湖沼を見た場 合、難分解性DOMを先駆物質として塩素処理で生成されるトリハロメタンによる健康影響への懸念が強まっています。 こうしたことから国環研の地域環境研究グループは、その難分解性有機物濃度が上昇している原因の解明や湖水有機 物の質的・量的変化が湖沼生態系、さらに水道原水としての湖水に及ぼす影響などを明らかにするため、1997年度から 3年間、霞ヶ浦で調査研究を行いました。
研究では、難分解性DOMを疎水性のフミン物質、親水性の難分解性有機類(親水性画分)についてDOMのトリハロ メタン生成能(THMFP)を測定したところ、親水性画分がフミン物質よりも多く検出されました。
この結果は、これまで疎水性のフミン酸がトリハロメタン生成の原因物質としてきた従来学説を覆すものとして注目さ れ、今後の行政富栄養化対策にも影響を及ぼす可能性が高く、注目が集まりそうです。
資料:平成13年7月11日付 環境新聞
環境計量課 竹下 尚長
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