中央環境 審議会水質部会の専門委員会は、窒素肥料などが変化して発生する硝酸性・亜 硝酸性窒素、半導体の製造過程で広く使われるホウ素とフッ素の計3物質に、 人の健康の保護に関する水質環境基準を設定すべきとする報告書をまとめまし た。これらの物質は一定量以上を体内に取り込んだ場合に健康上の悪影響が指 摘され、環境庁が1993年に指定した「要監視項目」の25項目の一部。汚染の実態 が裏付けられたとして今回初めて環境基準へと格上げされ、河川や湖沼、海域 での濃度が法規制の対象となります。2月2日開催の水質部会で了承を得た上 で、新基準を実施するということです。

 ホウ素に関しては、多量に摂取すると血圧の低下やショック症状を引き起こ し、フッ素に関しては、歯科治療用として樹脂に加工された場合などを除き元 素単独の形で取り込むと甲状腺障害などの原因になります。また、硝酸性窒素 に関しては、乳幼児に血液の病気を引き起こすとされ、海外では硝酸性窒素を 高濃度で含んだ水道水の摂取が原因で健康被害が出た例も報告されています。

 専門委の試料などによると、要監視項目についての河川、湖沼、海域からの 各物質の検出率は、ホウ素が海域で 99.5 %、河川で 68.6 %、フッ素も海域 で 98.5 %、河川で 71.1 %といずれも高率でした。硝酸性・亜硝酸性窒素の 検出率は河川、湖沼、海域で 92.3 から 99.6 %に達していました。専門委は こうした数値のほか、指針値を超過した程度なども考慮に入れ、3物質の規制 が必要と判断しました。

 環境基準は、フッ素が1リットル当たり 0.8 mg以下、硝酸性・亜硝酸性窒素 が1リットル当たり 10 mg以下で、それぞれ要監視項目で暫定的に決められてい る指針値と同じになる見通しです。また、ホウ素については、人体に入る経路 など毒性評価を再検討した結果、指針値の1リットル当たり 0.2 mgより緩和さ れ 1mg に改められます。

 3物質以外に基準設定が検討されていたモリブデンやニッケル、アンチモ ン、フタル酸ジエチルへキシルについては、今回は基準値設定が見送られる 方向とのことです。

                               


  資料:日本経済新聞・埼玉新聞・東京新聞、平成11年1月21日各号

重量分析課 内田 陽子

 


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