埼玉県は昨年、さいたま市の鴨川で「化学物質環境モ ニタリング調査」を実施しました。この調査は過去の水質調査で同川の内分泌かく乱物質(環境ホルモン)濃度が高かったことから、 野生生物への影響を把握するために初めて行われたものです。
調査では合計30匹のコイを捕まえ、雄の14匹について、血漿中の「ビデロジェニン」や精巣の形を調べたそうです。ビデロジェニン は女性ホルモンを投与すると合成される雌特有のたんぱくで、雄からは通常ほとんど検出されませんが、この調査では14匹のうち5匹 から検出されました。県はビデロジェニンの異常値の目安を血漿1 ml当り1μgと設定し数値を測定したところ、3匹が5.8〜14 μgで 異常値だったということです。東京都や国の調査と比較すると高い出現率です。
雄の精巣調査では3匹にひも状に縮む異常が見られ、生殖能力がない状態だったそうです。異常を示した2匹からは、いずれもビデ ロジェニンが検出されています。
この調査では同時に水質と底部の泥(底質)の環境ホルモン7物質の濃度も調査しました。底質のビスフェノールAなどは全国最大値 を更新するなど、全体的に高濃度であることをあらためて確認しています。 この結果について県は「ビデロジェニンを形成する要因は自然由来のものもあり、まだ環境ホルモンが原因とは結び付けられないが、 何らかの物質の影響を受けていることは判った。結果の見方について専門家の意見を聞き、さらに調査を行いたい」としています。
資料:平成14年1月22日付 埼玉新聞、 p.11
分離分析課 高橋真朋子
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