環境庁は平成11年度に国と地方公共団体が実施した 全国の水質と悪臭の測定結果をまとめました。
公共用水域の水質測定結果
健康項目では、従来の23項目で環境基準達成率は99.4%と前年とほぼ同様となっていました。新た
に環境基準が設定された3項目(硝酸性窒素および亜硝酸性窒素、ふっ素ならびにほう素)を含めた
達成率は99.2%でした。一方、生活環境項目では、有機汚濁の代表的な水質指標であるBODまたはC
ODでみると、環境基準の達成率は、河川で81.5%、湖沼で45.1%、海域で74.5%、全体では過去最
高の78.7%と、全水域において去年より上昇していましたが、湖沼等の閉鎖性水域においては、依
然として環境基準の達成率が低い状況となっています。なお全窒素および全燐の環境基準達成率は、
湖沼は40.6%、海域は72.6%でした。
今後の対策としては、健康項目については、これまで水質汚濁防止法による工場・事業場に対す
る排水規制の強化等により、全国的にほぼ環境基準を達成していますが、今後とも引続き公共用水
域の水質監視を行い、環境基準達成の維持に向けた水質保全対策の推進を図っていくようです。
生活環境項目については、有機汚濁や、それと密接に関わる全窒素および全燐による水質汚濁の
改善にはなお努力が必要な状況にあります。このため、平成16年度を目標年度とする第5次水質総
量規制を実施すべく、現在、準備が進められており、この規制対象項目として、新たに全窒素およ
び全燐が追加されることになっています。また平成12年6月の浄化槽法の改正により平成13年4月
以降、新たに設置される浄化槽は、原則として合併処理浄化槽とすることが義務づけられており、
生活排水による水質汚濁の改善効果が期待されるところです。
水質汚濁に関わる要監視項目(22項目)についての
公共用水域 および 地下水における水質測定結果
要監視項目とは、平成5年1月の中央公害対策審議会答申を受け、「人の健康の保護に関連する
物質ではあるが、公共用水域等における検出状況等からみて、直ちに環境基準とはせず、引き続
き知見の集積に努めるべき物質」として、環境庁が平成5年3月に設定したものです。平成5年の
設定当初は25項目でしたが、このうち硝酸性窒素および亜硝酸性窒素、ふっ素、ほう素が平成11年
2月、環境基準に移行され、現在の要監視項目は22項目となっています。
平成11年度の調査結果は、公共用水域では、調査地点2161のうち、1地点から1項目(イソキサチ
オン)、地下水では、調査対象井戸数1397のうち2項目(キシレン、モリブデン)が、それぞれ1地
点から指針値を超過した数値が検出されました。
地下水の水質測定結果
地下水の全体的な汚染の状況は概況調査における評価を基本としています。平成11年度の概況調
査結果によると、環境基準を超過した項目が1項目以上あった井戸の割合は、調査対象井戸(5199
本)のうちの5.6%(293本)でした。平成10年度の超過率は2.1%で、今回大幅に上昇したのは、要監
視項目だった硝酸性窒素および亜硝酸性窒素など3項目が環境基準に設定されたためと考えられ
ます。
悪臭防止法施行状況調査
悪臭苦情の状況について、苦情件数は18732件で、平成10年度に比べて1360件減少しました。
しかし、数年前までに比べ依然として相当に多い状況にあります。苦情の発生源別内訳は前年度
に引き続き「サービス業・その他」が最も多く、次いで「個人住宅・アパート・寮」、「その他
の製造工場」の順になっています。
悪臭規制等の状況については、規制地域(全国の市区町村の52.9%に当たる1731市区町村)
内において立入検査が4869件(前年度4855件)、測定が157件(同148件)行われ、前年度に比べて
増加しました。測定の結果、環境基準を超えていたものは26件で、法に基づく改善勧告が6件
(同1件)行われました。これらの措置のほか行政指導が7843件(7174件)行われました。環境庁
としては、今後とも、悪臭防止法に基づく悪臭防止対策の推進を積極的に図ってゆくようです。
資料:平成12年12月21日付 環境庁水質保全局HP
平成12年12月19日付 環境庁大気保全局HP
化学分析課 竹下 尚長
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